授業や講義の内容をテキスト化して学生やオンライン講義の受講生に配布することにはさまざまなメリットがあります。教育内容の理解を深める、復習のしやすさを向上させるなど、学生、教育者、専門家にとって非常に有益です。
本記事では、講義や授業の中で講師が話した内容をテキストに変換し、正確で検索可能な講義記録を作成することのメリットや、テキスト化の流れ、作業を効率化する方法について解説します。
授業・講義の内容をテキスト化するメリット
大学の講義やセミナーの内容をテキスト化することには、以下のようなさまざまなメリットがあります。
復習と学習効率の向上
学生が講義内容を後から見返して復習できるため、理解を深めやすくなります。教授や講師の音声を聞くのと違って、テキストでその内容を読み返すことで、単なる復習ではなく、新鮮な理解のプロセスとして活用できるでしょう。
また音声をテキストに変換してデジタルデータ化することにより、検索が可能となります。見直しが容易になり、特に重要なポイントや難解な部分を繰り返し確認できるのは大きなメリットです。
板書や授業中にノートを取る負担の軽減
授業中に教授や講師が要点を板書したり、それを学生がノートに取る行為は、理解の促進や復習のためにこれまで必要視されてきましたが、限られた講義やセミナーの時間を圧迫したり、講義内容そのものへの集中力を阻害するなど、負担やデメリットもあります。講義内容をテキスト化することで、そうした作業に時間や集中を奪われることがなくなり、授業そのものに集中できるようになり、質問や議論などより重要なフェーズに多くの時間を割けるようになるでしょう。
欠席した学生への配慮
病気やその他の理由で講義を欠席した学生が、テキストを読むことで欠席した分の学習内容を補完できる点もメリットです。講義後、なるべく早いタイミングでテキスト化して学生に配布すると良いでしょう。講師が学生の不ぞろいな理解度や進捗に頭を悩ませることも少なくて済むでしょう。
アクセスビリティの向上
聴覚障害を持つ学生や、母国語の異なる留学生にとって、講義内容のテキスト化は非常に有用です。テキストは翻訳ソフトを用いて別の言語に変換することも容易です。
大学の講義やセミナーのテキスト化 具体的な事例を紹介
大学などの教育機関では、講義やセミナーの内容をオンラインで提供し、講義内容をテキストデータとしてあわせて配布することでさまざまな利便性を提供しています。ここでは、それらの具体例をいくつか紹介します。
MITのOpenCourseWare (OCW)
Open Course Ware (OCW)は、マサチューセッツ工科大学(MIT)が提供するオンライン教育プラットフォームで、講義ノート、試験、ビデオ講義など多くの教育資料が無料で公開されています。
世界中の学習者がMITの講義内容をテキスト化された資料として利用できるため、学習の効率が向上し、学術知識の普及に大きく貢献しています。
ハーバード大学のCS50 Course
ハーバード大学の人気プログラミングコース「CS50」は、ビデオ講義とともに、講義内容がテキスト化されて提供されています。
プログラムコードや技術的な説明をテキストとして読むことで、学生はより詳細に内容を理解しやすくなります。また、後から特定のトピックを検索して見つけることも容易です。
東京大学のオープンコースウェア (OCW)
東京大学は、さまざまな講義やセミナーの内容をテキストやビデオ形式で公開しており、UTokyo OCWを通じて広くアクセス可能としています。
学生だけでなく一般の学習者も講義内容を自由に閲覧でき、予習や復習に役立てています。また、特定の分野に関する知識を深めるために利用されています。
授業・講義内容のテキスト化の手順
授業や講義内容をテキスト化する手順は、以下のようなステップに分けられます。これにより、効率的かつ高品質なテキスト化が可能です。
講義内容の録音
講義やセミナーのテキスト化は、講義の録音から始まります。
後述する文字起こしの精度に直結するため、録音機器はできるだけ性能の良いものを選ぶ必要があります。近年はスマホを活用することが多く、それでもある程度の精度を期待できますが、効率化のためには専用のICレコーダーの使用をおすすめします。
録音機器やマイクを設置する位置にも注意する必要があります。事前にテストを行い録音環境をチェックしておくとミスが起こりにくくなります。
音声データのテキスト化 文字起こしの方法
続いて実際に録音データをテキストに変換していく流れについて説明します。
録音データを整理
テキストに変換する講義の音声データが多くなるようであれば、録音データを適切に管理する方法を初めに確立しておけば、その後のいらぬ混乱を避け、効率的に作業を進められるようになります。日付などをファイル名に入れるなど視認性を高め、フォルダ分けによってデータの管理がスムーズにできるようにしておきましょう。
文字起こしの実施
音声データをテキストに変換する作業を文字起こしといいます。
講義やセミナーの内容を文字起こしするには、大別して以下の3通りの方法が考えられます。
- 音声を聞きながら自力かつ人力でテキストに変換
- 文字起こし専門業者に委託
- ツールと人力を組み合わせて自力で文字起こし
音声を聞きながら自力かつ人力でテキストに変換する方法は、外部委託する方法に比べてコストがかからず、内部のリソースを活用することにより、専門性の高い内容にも対応できる、情報漏洩のリスクを回避できる、などのメリットがあります。しかし一方で、文字起こしには想像以上に時間がかかり、スキルも必要となるため、1時間の音声データをテキスト化するのに4~5時間かかることもざらにあります。
そうしたリソースの問題を解消する方法としては、外部の専門業者に文字起こしを委託するという方法もあります。中には大学の講義など専門性の高い内容にも対応できる業者もあるため、文字起こしにかかる労力を大幅に削減しつつ、ある程度質の高いテキスト化が可能になります。
また、時間のかかる文字起こしを、ツールを活用して効率化することで、リソースが限られた状況でも、自力で文字起こしを行う方法もあります。
オンラインで利用できるAI文字起こしツールとして人気のSACSCRIBEを使って、実際に文字起こしの作業を効率化する方法については次章で詳しく解説します。
配布と活用
完成したテキストをPDFやWord形式に変換し、適切に保存します。デジタル化されたデータはクラウドストレージや大学の学習管理システム(LMS)にアップロードします。学生や関係者にテキストデータを配布します。LMSやメール、大学の公式Webサイトなどを通じて共有します。
情報が一方的なものにならないよう、学生や利用者からのフィードバックを収集し、内容や形式に対する意見を取り入れるようにしましょう。テキスト化のプロセスや配布するコンテンツを継続的に改善していくことも求められます。
SACSCRIBE(サクスクライブ)を活用して文字起こしを効率化
AI文字起こしツールとして人気のSACSCRIBEを活用して、文字起こしを効率化する方法を紹介します。
サクスクライブにログイン
サクスクライブはオンラインツールです。アカウントにログインして利用します。さまざまなデバイスからアクセスできるため、チームでの利用などにも向いています。
料金体系は以下の通り。利用枠とは文字起こしを実行する音声データの長さを示します。どの程度の利用が見込まれるかに応じてプランを選択しましょう。初回登録では1時間分の無料枠がありますので、実際に使用感を試してみると良いでしょう。
プラン | ベーシック | ミニマム | ライト | スタンダード | プレミアム |
月額料金 | 0円 | 990円(税込) | 2,750円(税込) | 4,950円(税込) | 19,800円(税込) |
利用枠 | 1時間(初回のみ) | 3時間 | 5時間 | 10時間 | 60時間 |
AI要約 | ○ | ○ | ○ | ||
料金 | 利用枠超過時1分38円(税込) |
音声ファイルのアップロード
サクスクライブは非常に簡単に直感的な操作が可能です。
音声ファイルのアップロードも、ファイルを選択するか、下図の青枠内にドラッグ・アンド・ドロップするだけです。
上でも述べたように、タイトルは管理しやすいように必要な情報を盛り込むようにしましょう。
サクスクライブが対応している音声ファイルの種類は多く、今のところmp3, mp4, wav, m4a, ogg, aac, amrに対応しています。一般的な動画ファイルの文字起こしも可能です。
非対応の形式のファイルを使いたい場合は、拡張子の変換について以下の記事をご覧ください。
iPhoneで録音撮影した.m4aや.movファイルの.mp3への変換方法
文字起こしの確認と編集
サクスクライブに音声ファイルをアップロードし、任意のタイトルを入力、右下の「登録する」のボタンをクリックし、ポップアップ表示でさらに「登録する」を選択、遷移した画面で「依頼する」を選択すると、AIによる自動文字起こしがスタートします。ファイルの長さにもよりますが、30分ほどで文字起こしが完了します。
サクスクライブの長所として、AIによる精度の高い文字起こしが可能なだけでなく、自動で文字起こしされたテキストを、画面上で編集・校閲できて、そのための機能も充実している点があります。
校正画面で音声を聞きながらテキストができ、再生/一時停止、巻き戻しや早送りなどの頻繁に使う機能をショートカットキーでクリック操作なしで行える点も、実際に文字起こしを行う人たちに大変好評なポイントです。
タブの切り替えで校正前と校正後のテキストを比較することもできます。
データのダウンロードも同一画面上の青丸部分のボタンクリックで簡単に行えます。